※アンソロに寄稿した本編とは違うEDです
引き寄せられる力そのままに、相手の肩に顔を寄せる。
こちらの動きが予想外だったのか、ごくりと喉が鳴る音がすぐ近くに聞こえた。
掴まれた手首が痛くて、熱い。
「ね…手、痛い…」
「んぁ…悪ぃ」
謝罪の言葉が空々しく思える程、緩められはしても離されない手は、逃げられそうで逃げられない甘やかな拘束のようで。
熱は、加速する。
髪をそろりそろりと撫でる手のひらが、耳を擽り、首筋を辿り、顎に掛けられる。
くいと上を向かされて、薄紫の瞳を至近距離で捉える体勢になった。
額に巻かれた包帯の上に一筋の金糸が落ちているのを、ゆっくり掻き上げてやると同時に閉じられた瞼が再び上がった時は、薄紫の奥が妖しい光に揺れた。
躊躇いがちに寄せられる唇は額から米神、頬へと下り、唇を軽く啄ばむ。
様子を窺うような動きがまるで彼に似合っていなくて、可笑しくてつい笑ってしまう。
「何だよ、ムードないな、オマエ」
「だって。何だか似合わないんだもの」
逸らさずにしっかりと目線を合わせて答えれば、んじゃアナタ様のお気に召すように、言葉が終わるか終らないかのうちに強く口づけられた。
ゆるゆると歯列を這う舌先が、先を促すようにつつく。
焦らされるのに耐えかねて、強引に口内に押し入られ、舌を絡められる。
吐息ごと持っていかれる深い口づけで、頭の芯が痺れ出す。
酸素の足りない頭では、まともに思考回路なんか働かない。
痺れはやがて頭の中に白い靄を齎して、ますます思考を奪っていった。
さっきまで見ていた漆黒の空間も、艦尾が描く航跡の残像も、白く霞んであやふやに滲む。
今までの記憶が溢れては消え、溢れては消え。
堪え切れず熱いものが眦から零れ出せば、止まる術を忘れたかのように流れてきた。
労わるように頬の軌跡を拭う指の優しさとは裏腹に続けられる口づけは、強引で、我侭で、自分本位で。
が、その強引さが今は全てを忘れろと言っているようなそんな気がして、彼の導くままに身を委ねる。
何かに縋って生きていけるならどれ程楽に生きられるのか。
『でもオマエはそんな生き方はしないんだろう?』と分かっていて、目の前の胸はこの身を受け止めてくれる。
優しいようで残酷な腕の温もりを知れば知るほど、弱い心を見透かされていることが悔しくて。
それでも、もう、この温もりを。
自ら手放すことは出来そうには、ない。
《了》
VIVA!ミリ誕!ということで。
2009/02/01発行DMアンソロジー『DM IMPACT』寄稿原稿のanother ver.です
本編はぜひアンソロでお読みくださいませ~v
(20090216webup)