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漣のきこえる森~prologue・d-side

エセパラレルファンタジー設定のディアッカside。
許せる方だけどうぞ。
 
 
 
続き
 
 
 
 

細く鋭い風圧がビュンという音を残し、重い剣先の如く此方の頬を掠める。
鋭い爪が一方向からだけではなく、反対方向からも数度向けられ続くが、ぎりぎりのところでかわし身を反転させた。
ギラギラと殺意に満ちた眼光を見据え相手の隙を伺う。

自分より数段図体の大きなこの相手は、愚鈍なようでいて意外と素早い動きを見せている。
ほんの僅かでも油断をしようものなら、間違いなくあの鋭い爪で身を引き裂かれるだろう。
爪と同じく鋭く尖った牙が此方を獲物と定め、血肉を求め骨まで食らい尽くそうと厭な光を放っている。
おぞましい姿の全身から、ゆらゆらと陽炎のような殺気が立ち昇るのが見えるようだ。

――殺るか殺られるか。
いつでも、ただ、それだけ。
命を賭した戦いではあるが、何となく浮き立ち胸が高揚する気分は嬉しくもあった。
腹の底から沸き上がるものはどす黒ささえ孕んでいるのに。
そんな自分への嘲笑なのか、戦いそのものに喜びを感じているのか、今、確かに自分は口元にも目にも笑みを浮かべている。

《もう少し、楽しませてくれ…》


何の感情も持ち得ず本能だけに従って生きてはいるが、凡そ生き物とも呼べない魔物たちを相手に、今のようにもうどれくらい戦ってきたのだろう。
いつの間にか戦うことそのものに喜びを得ることも覚えた。
元々剣士であるから、戦うことに恐れも迷いもなかった。
ひたすら生死を賭けて己が身を削るのみ。
相手を倒す事に底知れない喜悦すら覚える。
戦いに身を投じている間だけが、己の存在意義の全て。
他者との交わりは戦いを通してのみ。
今の姿に変わる前も、これからも、たぶん。

 
 
 

~以下、オフ本にてどうぞ…

(20080902webup)