ハピバssです。
<続き>からどうぞ。
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冬コミペーパー。
すっかり忘れていましたが、昨年の冬コミで配布したペーパーを…。
あんまり刷れなかったのであっという間になくなってしまい、大変に申し訳ありませんでした。
いまさらですが、アップしますねー。
ただし、2011年6月に発行されたDMアンソロに寄稿したものとシンクロしておりますので、ご了承ください。
(※修正/2021/12/26)
潮騒のひかる海
※2011年2月11日・SEED IMPACT SN発行ペーパーより再掲
瞼の裏に薄らと透ける光の感覚に、おそらくもう直ぐ朝が来るのだと感じた。
寝返りを打とうと体を動かすが、しっかり拘束する腕がそれを許してくれない。
「…もうちょっと、いいだろ?……も少し、こうしてようよ…」
一段強くなる拘束と耳元に落とされる甘い低音に小さく身震いしてしまった。
「ん? もしかして、感じてる?」
くつくつ笑う声と同時に拘束していただけの腕が怪しい動きを始めた。
「ちょっと…ディアッカ!」
このまま相手の言いなりになるのも悔しくて抵抗するのだが、余計に抱き締める力が強くなる。
はあ、とわざと溜息を吐いてみせ、諦めの態度を取るべく肩の力を抜いた。
一瞬緩んだ腕を掻い潜ってディアッカの方を向く。大好きな夜明けの空の色が直ぐ目の前にあった。
「もう、夜が明けそうよ。朝が、来る…」
そう。
太陽が昇り切ってしまえば、ディアッカは人の姿から黒い毛並みの獣に変わってしまう。
夜の間だけ人の姿でいられる宿命に、当の本人はどう思っているのだろうか。
飄々とした顔からはその思いは窺えない。
自分とは違う濃い肌の色の下には、本人しか知り得ない何かがあるのだろうと、私は皇かな頬に手のひらを添え、つい、と啄ばむだけの口づけをディアッカに寄せた。
†
海が見たい、と言った私の我侭な願いをディアッカは聞いてくれた。
自分の生まれ育った国から遥か遠く離れたこの異国の丘に私たちはやって来た。
昼間は息を潜めるように森や岩陰に身を隠し、日の沈んでいる夜の間だけ移動する。
時に予想もしない困難に出遭い、命辛々それらを振り切りながら、辿り着いたこの地で、私が初めて見た海は。
緩く弧を描く水平線と空の境目が融け合うような夜明けの海。
まるでディアッカの瞳の色のようなその海を、私は瞬きもせずずっと見つめていた。
漣が寄せては返す度にざわざわと聞こえる音を『潮騒』というのだとディアッカが教えてくれた。
生まれ故郷の森でいつも聞いていた葉擦れの音に良く似ていると思った。
あの国に暮らしていたなら、海など一生見ることはないだろう。
想像でしか描けなかった景色が今、眼前に広がっている。
自分自身の存在がつまらないちっぽけなものにしか見えない、どこまでも続く海。
優しく寄り添う温もりに抱かれる私の頬を、何故か涙が一筋伝い、流れ落ちていった。
++++++++++++
この続きは、6月のプチオンリーで予定…。
よろしくお願いします。
儚き光の幻
※2010/02/07発行予定本より一部抜粋
オペレーター席から目の前のモニター越しに見ていた景色は凡そ全て、あの閃光に包まれ、熱とともに散った、と思った。
呆けていたミリアリアを現実に引き戻したのは、遠慮がちに肩に置かれた手のひらの温度と重さが、すぐにまた離れていった、その感触。
ミリアリアは静かに瞼を閉じた。
一気に全身から力が抜けていくのがわかる。
――本当に、全部終わった、んだ…。
閉じた瞼の裏に真っ白な閃光が残像として刻まれている。
遡る記憶の波が彼女の意識を奪おうとしていくのを断ち切るように、タイミング良くコンソールパネル脇のコール音が鳴った。
ミリアリアは反射的に、背を預けていたオペレーター席の上ですいと背筋を直しモニターに向かうと、鳴り響くコール音に答えるべく、パネルのキーを叩いた。
***
プラント暫定評議会からの停戦宣言を受けてのち、数時間が既に経った。
停戦とともに、周辺宙域にあるモビルスーツや救難ポッドが、かつての敵味方も関係なく、近くにある艦への収容を求める通信を打診してくる。
アークエンジェルにも通信がひっきりなしに入り、ブリッジはさながら戦闘中のように慌ただしかった。
だが、激しい戦闘でアークエンジェルの損傷も尋常ではない。
手助けしたくとも十分に出来ない状況にクルー皆が歯がゆい思いを抱えている。
そんな状況の中、エターナル、クサナギとも連携を取りつつ、テキパキと収容する先を決めていくマリューの背中を、ミリアリアは何とも複雑な思いでずっと見つめていた。
***
プラントへ向けての宙域をゆったりと航行するアークエンジェルの航跡が淡い光の弧を描くのを、ぼんやりと見つめる。
あちこちに漂うデブリを避けながら、右に左に光の帯を残しゆったりと進むこの艦はやがて、プラント宙港の何処かに入港するのだろう。
何となく周りを見回せば、半舷休息中だというのに、最後尾にあるこの展望室にはミリアリアの他には誰もいなかった。
慌てて自室を出てきたせいで、眠る前の格好そのままだったから、一人きりなのは都合がいい。
このまま誰も来なければいい、そう思いながらまたガラスの外へ視線を向けた。
ここ数カ月、忘れてしまったかのようにずっと見ることのなかったあの『悪夢』のアラート音が、今も耳について離れない。
モニターに映し出された文字が示す意味を頭が理解するまでとても長い時間がかかった気がする。
艦に残ることを選んだのは良かったのだろうか。
一度目の機会は地球に降りる前。
勧められるままに退艦していれば、確実に戦争の現実を直視せずに生きて行けた。
でも自分が降りると言っても彼はきっと残っただろう。だったらあの日の出来事は既に運命として、己の身に決められていたことだったのか。
二度目はオーブ本土決戦の前にあった。誰にも左右されない、自分の本心のみに従って出した答えが、考えていたよりも過酷で苛烈だったけれど。
――あたしの選択は、間違ってなかったんだよね…。
たった一枚きりの一緒に映ったポートレイトと、何時か褪せていく思い出だけを残して逝った、思い人だった人の笑顔が浮かんで、さっき思い切り泣いたはずのミリアリアの頬を涙が再び濡らした。
***
プラント暫定議会から停戦宣言が出された後、周辺宙域に漂う、旗艦のなくなってしまったモビルスーツや救難ポッドを幾つか収容したらしいアークエンジェル内は、来ている軍服やパイロットスーツの色も形も様々な人間たちで溢れ、艦内はそれなりに人々が忙しく行き交っている。
艦のあちらこちらに戦闘の爪痕が深く残され、同様に負傷した人間も多く、当然医療班だけでは応対の手が足りない。
前線以上に戦場のような医務室は収容しきれない患者がたくさんいた。
ここではもはや所属や軍籍の意味はなく、まずは重傷者の処置が最優先され、軽傷者は簡単な応急処置でも施されれば運が良い方で、後は自分で何とかしろと医務室を追い出される。
仮にも『ザフトの赤』を纏っているディアッカもその例外ではなく、クルーの皆と変わらぬ扱いだった。
帰艦後診てもらった額の傷は出血の割に浅く、「これくらいの傷、舐めときゃ治る」とばかりに、簡単な消毒とおざなりに包帯を巻かれただけで医務室を出された。
確かに、あの戦闘の激しさと長さから、重傷を負った者や、不運にも命を落とした者も多くいるだろうと予想に難くない。
自分も命辛々ここに帰って来たが、幸いなことに、バスターは大破したにも関わらず、こんなかすり傷一つで戻ることが出来た自分はよっぽど運が良かったのだ。改めて己の悪運の強さに感謝した。
~以下、オフラインにて発行…
月虹
≪光弦~another-side≫の続き。
18禁描写が含まれますので折りたたみです。
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漣のきこえる森~prologue・R18
※内容に18禁表現を含みますので、18歳以上でそういう表現が許せる方だけ、リンクをクリックプリーズ!
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漣のきこえる森~prologue・m-side
エセパラレルファンタジー設定のミリアリアside。
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